ベルリンの壁
また陽が沈んでいく。あのベルリンの壁の向こうに。
私は毎日それを見届ける。夕陽にあの人への言葉を託す為に。
日が沈み切り、伸びてくるあの壁の影。
それが私に届くまで私は壁を見つめ続ける。
視線の先にあの人がいることを期待して。
また月が歩んでいく。あのベルリンの壁を渡って。
僕は毎日それを眺める。彼女も同じ月を見ているはずだから。
あの恨めしい壁を明るく照らす月の光。
それが窓から見える限り、僕はその光を浴び続ける。
月の鏡に彼女が映ることを期待して。
3メートル60センチのベルリンの壁が分かつは地上の全て。
国を、世界を、そして愛しあう二人を。
同じベルリンの空の下にいるのに、壁の向こうにいる相手は月より遠い。
また鳥が飛んでいく。あのベルリンの壁を越えて。
鳥は毎日それを見下ろしている。自分を妨げられない壁をせせら笑って。
あの冷たい壁は火のない戦争が生んだ氷の塊。
それが日光に融けるその日まで、二人は鳥に憧れ続ける。
夢に愛する人との逢瀬を想い描いて。
あとがき
この詩はこのサイトを立ち上げてから新しく書いたものです。やっぱり発表済みの作品ばかりではよくないと思いまして。ちなみにタイトルはいつもの通り、櫻田さんのところの100のお題です。 |
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